※響け!ユーフォニアムに関するネタバレが含まれます。(原作小説、アニメ)
ついに完結してしまいました。響け!ユーフォニアム。
これまで1期、2期、劇場版3作と続いた後、2024年4月から3期シリーズ久美子3年生編が始まり、完結へと向かうストーリーです。
私は1期と2期の途中まで過去に視聴した記憶がうっすらっとあった程度だったため、どうせ中途半端な形で3期を観るよりはこれまでの流れを押さえた方が楽しめるんじゃないかと思い、急ピッチで過去のアニメを全て吸収したのであります。(マジで1・2週間程度で)
1期を観ていた当時は特段印象に残らなかったのに、今年一気見した時には「お、面白いやんこれ!」となりました。さらにアニメにはないスピンオフ(立華高校編)に手を伸ばし、「原作ってこんな感じか、面白いやん!」となり、さらに勢いづき原作小説にも手を染めていきました。
アニメ3期の中盤ごろ(8話ぐらい?)の放送時には既に原作小説を全て読破し、完結まで把握している状態で、アニメ3期で賛否両論となった12話を鑑賞したのです。
原作とアニメの差異について
さて肝心の12話ですが、私は通常通り原作に忠実に話が進んでいくものと思っていました。 原作では全国大会前の最後のソリオーディションで久美子が選ばれてましたが、アニメでは突然2人の名前が読み上げられました。油断してたので「おいおいマジかよ・・・!」と声が出てしまう・・・(笑)
確かにオーディションのシーンが全くなかったのでかなり省略しているなぁといった印象だったんですが、オーディションのシーンはこの後2人の再オーディションと言う形で放送されるのです。
なぜこのような変化が生まれたのかは、話が進む中で2人の考え方に小説とは違う変化が生まれたからだと思います。(視聴者視点では2人の考え方の違いがまとまる事はなくオーディション当日を迎えておりますが・・・)
3期放送前のキービジュアルや真由が登場してから11話までを踏まえると、久美子の「北宇治が好き」、「正々堂々と実力で勝負をする」と1年生の時から継続している信念(私のわがまま)に対して、真由は「合奏が好き」で、あくまで「争いを避けてみんなで楽しく合奏ができれば良い」というスタンスでした。
つまり久美子にとっては、「実力で勝負する」または「実力以外の要素を加味する」、まゆにとっては、「楽しく吹くために辞退する」または「誠実に演奏する(枠を取りに行く)」とそれぞれ2通りの行動が選択肢がありました。すると大きく4パターンが考えられ、2人がそれぞれどの選択肢を選ぶかによって結末が変わるのではないかと思います。具体的には以下の通り。
- 久美子: 実力で勝負する、真由: 楽しく吹くために辞退する
- 久美子: 実力で勝負する、真由: 誠実に演奏する
- 久美子: 実力以外の要素を加味する、真由: 楽しく吹くために辞退する
- 久美子: 実力以外の要素を加味する、真由: 誠実に演奏する
さて本編で採用されたものはどれでしょうか?
結論としては、原作では①、アニメでは②だったのだと思います。それぞれ解説していきましょう。
① (原作?)久美子: 実力で勝負する、真由: 楽しく吹くために辞退する(真由バッドエンド)
久美子の「実力主義」は、1年の時の麗奈との約束でもあります。努力がきちんと反映されること、人間関係などの感情によって結果が歪められないところが北宇治の良いところだという思いが、これまでの部員のやりとりから形作られていきました。
しかし、そこで真由の登場です。真由は過去の経験上、「実力主義」によって人間関係において苦しんだからこそ、実力で勝負することに対して嫌悪感を抱いています。 さらに転校してきた生徒がいきなり枠を1つ奪うということのインパクトの大きさもよく分かっていました。
主張を譲らない久美子に対して真由が一歩引きソリを辞退すると言うことによって全体が丸く収まれば良い、そう思うのも無理はありません。( 原作の小説では真由が辞退したということは明確に語られていませんが、その可能性は十分にありそうです。)
久美子と真由の実力が拮抗していることから、どちらがソリを担当しても全国大会での結果に変わりはなかったと思います。
原作の小説では、久美子が自分の意志を貫き通し、3年間の吹奏楽部としての集大成を見せつけるということに重点を置き、見事なエンディングへと結びつけたストーリーになっています。
このパターンでのエンディングは、吹奏楽部としての全国大会での結果や久美子視点で見るとハッピーエンドですが、真由視点で考えると、転校生という難しい立場が枠を奪うのを避けるため自分が引き下がるしかなく、北宇治の考え方に馴染めないまま引退を迎えることになってしまいます。
極端ですが、恋愛シミュレーションゲーム的に言えば、真由のバットエンドと解釈しました。
② 久美子: 実力で勝負する、真由: 誠実に演奏する(ベストエンディング)
さてこちらはアニメ版のエンディングになります。久美子は相変わらず主張を変えず実力で勝負することにこだわっていました。 一方でまゆはずっと迷っていたのではないでしょうか。久美子と仲良くなりたいからこそ久美子の考え方を受け入れようと必死に考え、 久美子の主張に沿った行動(手加減しない)へとわずかでも移したことが、再オーディションや上記1との差を生むキッカケになりました。
再オーディション直前に2人で話す時間が生まれ、ここで真由は久美子に最終確認をします。
「辞退しようか?」
真由は自分自身の過去を話し、自分の考え方が間違っていないことを伝えました。ここで久美子はきちんと真由の考えに向き合いその考えを理解できると伝えつつも、過去の吹奏楽部での軋轢や麗奈との約束があることをきちんと話し、自分の主張(今年の部の方針)は変えられないことを改めて伝えました。
アニメの中で描写はなかったがここでまゆは久美子を信じようと言う気持ちが芽生えたのではないでしょうか。その思いが再オーディションに現れます。手加減なしで実力で勝負をしました。 投票結果は僅差となり真由がソリを吹くことになりましたが、当然のごとくその結果に不満を抱く人が現れます。 久美子の言葉を信じたものの、 過去の苦い記憶が蘇り、やっぱり辞退すれば良かったと後悔の念にさらされたことでしょう。
ここでの久美子の演説によって真由は救われます。「実力主義」とは何なのか改めて自分に問い直し、自分も例外ではなく今このメンバーが「実力主義」で最強のメンバーなんだと自分自身も含めて改めて部員全員に認識させました。 自分自身のソリとしての演奏よりも北宇治らしさを重要視することで、真由の立場を守ることに成功したのです。
久美子にとって当然悔しさはありましたが、部長としての責任とこれまでの経験、それに加えて将来なりたい姿を考えたときにどのような行動をすべきか冷静に判断できたこの成長ぶりには舌をまきました。
実力主義ということが苦い記憶でしかなかった真由にとって、北宇治でのこの経験は苦い記憶を上書きできる瞬間だったでしょう。 本気で演奏しても誰も苦しまない、そんな環境があるということがわかったことが彼女にとって大きな財産(未来への種まき)となったはずです。 「合奏が好き」から「北宇治が好き」へと少しは変化したかも。
結果としては、久美子はかねてからの主張を崩さず、真由は自らの思考パターンを北宇治によって変えられつつも純粋に演奏に取り組める環境を手にし、部は悲願の金賞を獲得することに成功しました。 これこそが響け!ユーフォニアムのベストなエンディングではないでしょうか。
どのような意図で原作を改変し、アニメを取りまとめることになったのかは分かりませんが、私としては上記の分析によって別のエンディングを作る価値があるのだと判断したように思います。そこのところはぜひ制作陣の話を聞いてみたいです。
③④ 久美子が実力以外の要素でソリを獲得する展開について(麗奈バッドエンド)
残りの2つ3番と4番については、久美子が実力以外の要素でソリに選ばれる展開です。つまり、1年の時の香織先輩のように後輩に推される立場を演じるということです。もちろん、玲奈と交わした約束を破ることになります。
久美子と真由の実力が拮抗している点から、このような展開になったとしても全国大会で金賞を勝ち取ることができたかもしれません。 久美子と一緒に歩きたいと言う玲奈の願いは叶えられたことにはなりますが、実力のある人間が演奏の舞台に立つべきだという麗奈の信念と矛盾し、ジレンマを抱えることになるでしょう。
このような展開が、二人にとって「未来への種まき」となり得るでしょうか?
大人になってから当時を振り返ったとしても、 しこりの残った思い出がきれいな思い出として蘇る事は難しいでしょう。
⑤ (おまけ)もしも、再オーディションにて実力主義で久美子が選ばれる場合・・・
たらればの話ですが、再オーディションにて真由ではなく久美子が実力主義でソリにふさわしいと選ばれた場合どのような結末になるでしょうか。
久美子、麗奈にとっては3番4番の展開よりはマシかと思いますが、やはり真由が最後まで実力主義に馴染めずエンディングを迎えることになり、完璧なハッピーエンドとはいかないはず。
まとめ
全部で5パターンの全国大会への展開を比べると、久美子がソリを全国大会で吹く展開ではハッピーエンドになり得ないということがわかります。やはり3年生の時に転入し、実力主義に反する思想を持つ真由を放置していては、「全員揃って北宇治」というハッピーエンドは望めません。
真由という存在は、それを証明するための最大の壁となって久美子の前に立ちはだかったのです。
実力主義社会が人間関係の摩擦を生むとは限らない、努力が報われることと部内の雰囲気づくりの両立を図ることができるということを証明することこそ、久美子自身が高校生活で感じた使命だったです。
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